感想【おいしいごはんが食べられますように】高瀬 隼子

第167回芥川賞を受賞した作品「おいしいごはんが食べられますように」を読みました。

黒い線のみで書かれたお鍋に黄色いスープ

そんなシンプルな表紙が記憶に強く残ります。

どんな内容か気になっていた方も多いのではないでしょうか?

本との出会い

私がこの本を知ったきっかっけは、AmazonのAudible(聞く読書)でした。

当時Audibleで、おすすめによくあがっていたのです。

芥川賞を受賞した作品と知ったのは、実は本を読み終えてからでした。

芥川賞受賞作品!それはおすすめされるはずですね。

一体どんなお話なのでしょうか?

表紙から想像するには食事の話でしょうか…?

目次がない?

表紙のお鍋から、日々の食事についての小説と想像しました。

読み始める前にどんな内容か、少し知りたいですよね。

物語を頭であれこれと予想しながら、目次を見てみます。

あれ?ない。

パラパラパラとめくってみる。

やはり ない。

では、あとがきを見てみよう。

パラパラパラ…。最後のページから何度か見返すが、見当たらない。

そうです。目次もあとがきもありません。

表紙のお鍋と裏表紙の黄色いケーキの情報しかないまま、読み始めることにしました。

本の内容

内容は日常の食事についての話でしょうか?

結論。

女性の差し入れが引き起こす、社内の陰湿な出来事の話です。

何だそれ?ですよね。

もう少し詳しく話します。

同僚3人の人間関係と心情

物語は下記の男女3人が主です。

  • 芦川 良妻賢母という言葉が似合う女性。体調を崩しやすくて早退しがち。かわいらしさもあり、周りから守られるタイプ。二谷と交際。
  • 二谷 食に全く興味がない。冷めた考えが多いが、それを口に出すことはない。芦川と交際。
  • 押尾 2人の後輩。二谷とよく食事をする。芦川が早退時の仕事が回ってきがち。不平等さに不満。真面目な性格。

みんなに可愛がられている芦川。

体調を崩しがちで、早退することも多い。

煙たがられそうな存在なのに、持ち前の人懐っこさで周りが配慮してくれる雰囲気に。

その雰囲気に不満と疑問を持ち、二谷に愚痴を吐く押尾。

そこで押尾が「二谷さん、私と一緒に芦川さんにいじわるしませんか」と持ち掛ける。

二谷は「いいね」と返事。

ここから二人の意地悪が始まるかと思いきや、そんなことはなくお酒が入ったその場限りの会話のようだった。

ある日の差し入れ。それが物語の大きく動いてくるきっかけに…。

気の利いた差し入れ

マフィンを差し出している女性の姿が。

前日に頭痛で早退した芦川が、マフィンを作って出社してきたのだ。

「薬を飲んで寝たら治ったので、作ったんです。仕事代わっていただいて、ありがとうございました。」

この言葉、みなさんはどう感じましたか?

私は「早退してマフィン作ったんかい!」とツッコミました。

マフィンを作るのは自由としても、早退をして迷惑をかけているので必要ない言葉かなと個人的には思いました。

私の心が綺麗なら、「体調がしんどい中、マフィン作ってきてくれたの!?気を遣ってくれてありがとう!」って…なる…。いやっゴニョゴニョ…。

このマフィンから、度々手作りの差し入れを持ってくるようになります。

みんなの疲れてきた頃合いに差し入れを出す。

気が利いていますよね。

差し入れが疑惑を生む

芦川の純粋な差し入れが、ある出来事に繋がっていきます。

ネタばれになるので、内容はここまでにしておこうと思います。

面白いなと感じたのが、二谷の食への冷淡な表現。

食事を大切に考え、きちんと生きるのがすきな芦川が、コンビニ飯ばかりの二谷にかけた

「お味噌汁だけでも作ったらどうでしょうか?簡単ですよ。心配です。」に対して。

しねぇよ、振りかぶって殴りつけるような速さで思う。この人に、ぐつぐつ煮えていく鍋をみつめている間、おれはどんどんどんどんすり減っていく感じがしますよ、と言っても伝わらないんだろうな。咀嚼するのが面倒くさい。芦川さんみたいな人たちは、手軽に簡単、時短レシピ、という言葉を並べながら、でも、食に向き合う時間は強要してくる。

おいしいごはんが食べられますように
第167回芥川賞受賞! 「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」 心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。 職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。 ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。

出典

二谷の心の声が正論のようで偏見なような。いや、偏見のようで正論なのか?と考えるのも楽しいですよ。

まとめ

読み終えて感じたのは、言葉の表現の素晴らしさです。こんな風に表現するんだなと感じる箇所が多くありました。

人物の性格がはっきりしているので、考え方や行動がすんなり入り、スラスラと読み進めることができました。

話が進むにつれて、二谷と押尾の行動は理解しがたいものでしたが、押尾の芦川への不満はわかる人も多いのではないでしょうか。

誰かの尻ぬぐいが多くてモヤモヤしている方。

そのモヤモヤを言葉にして書き出してくれています。

そうなんだよね。と思いが共有できて、モヤモヤが少し晴れる気がしますよ!ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 

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